紅葉(こうよう)とは
秋に一斉に葉の色が、赤や黄に変する様子であり
日本の秋のイベント、四季の移り変わりを伝える現象です。
主に
落葉広葉樹(らくようこうようじゅ)の
平たく広い葉が、落葉(葉を落とす)の前に、
夏の青々とした緑から、葉の色が秋色に染まっていき
冬の寒さに負けない色合いを出す自然の理で
紅葉は
秋の観光の対象にもされていて
冬の始まりを告げる幻想的な感動を覚える風景です。
落葉樹の特徴
マツやスギなど
「常緑樹(じょうりょくじゅ)」という種類では
「常に緑の樹」と、まさに字の通りで
冬でも緑の葉のままを保ちます。
一斉に紅葉して葉が落ちるわけではなく
「葉の寿命が長い」のが一般的で
常に緑を保っているわけではなく
紅葉していないように見えるだけです。
いずれにしても葉が古くなっては順に枯れ
葉が枯れ落ちる時には紅葉しています。
一般的な落葉樹は
すべての葉の寿命がほぼ同じなので
一斉に落葉します。
秋になると栄養を蓄えるために
葉を落として寒い冬を乗り越える樹木です。
寒い冬が終わり
春の到来を知らせる様に
春を迎えて葉が芽吹き始めます。
晩春や初夏の
若葉のみずみずしい緑色の新緑(しんりょく)を経て
夏を知らせるように
夏には十分な葉をつけ
夏の高く暑い日差しをさえぎってくれます。
暑い夏が過ぎ去ったと、秋を知らせる様に
秋には美しい紅葉を見せつけてくれます。
冬を知らせる様に
冬には葉を落とし、木陰も無く
すべてが落葉して幹枝のみの容姿となり
冬の低い暖かな日差しを与えてくれます。
季節の到来、四季を感じられる特徴は
人の一年と共にあるように思います。
紅葉のメカニズム
葉にある
緑色の色素「クロロフィル(葉緑素)」は
光エネルギーを吸収する役割をもち植物に必須な成分です。
落葉樹は夏の間、
葉が活発に光を吸収していますが
秋になり
気温が下がり日照時間が短くなると
葉は
光エネルギーを吸収する働きが低下します。
すると
樹木は「葉は不要」と判断し、
冬の準備を始めて、「葉を落とす」体制に入ります。
そうすることで、
葉の中で栄養を作っていたクロロフィルが
分解され(壊れ)てしまいます。
今まで葉に送っていた
栄養供給(水分や糖分など)を止めて
有害なものを
葉から幹に送り込ませないようにしてしまうのです。
葉に蓄えられた栄養は幹へと回収され
この栄養は
来春に葉を出すようリサイクルされる仕組みです。
乾燥する冬には
葉裏の気孔からどんどん水分を奪われてしまい、
樹木全体が死んでしまいますから
木は
自衛のため「葉を落とす」ことにより
冬の期間の
水分の蒸発やエネルギー消費を防いだりしています。
そして
落ち葉からは約50%の栄養素を再利用しています。
栄養供給が止まった葉は
クロロフィルが壊れてしまったので
その葉に隠されていた色素や別の色素と作用して
紅葉が始まるわけです。
では
何のために色を変えるのかは諸説ありますが
実のところわかっていないのです。
葉は葉で必死に色を変えながら
落葉から身を守っていることになります。
つまり
樹木は「生きる」ために「葉を落とす」
葉は「生きる」ために「紅葉する」と、言えます。
落葉樹の種類
葉が赤色に変化するだけでなく
木の個体差によって、同じ種類の木でも
赤くなったり黄色くなったり様々なため
狭義的には
「紅葉(こうよう)」・赤くなる、
「黄葉(こうよう、おうよう)」・黄色くなる、
「褐葉(かつよう)」・褐色になる
葉の色によって呼ばれ方が異なり
厳密に区別するのは
多様で複雑にして困難であるため
いずれも「紅葉」として扱われています。
離層
葉には元々
緑色の色素の「クロロフィル」と、
黄色の色素の「カロチノイド」が含まれています。
夏場の葉は、緑色の色素が多いので、
黄色の色素は、ほとんどが隠れてしまい
黄色は目立たず、葉は緑色に見えます。
秋になり日照時間が短くなり、気温が低くなることで
植物本体の維持の為
樹木は葉を落とす準備を始めます。
その時、
葉と枝の境に「離層」という特殊な細胞層が作られ
葉は
枝から水分の補給が絶たれ
葉の中で生産された糖分が、葉の中に残ったままになり
緑色の色素、クロロフィルが壊れ(葉の老化)、
その過程のなかで
葉の色が赤や黄色に紅葉し、その後に落葉が訪れます。
紅葉(こうよう)
「アントシアン」の赤色の色素
紅葉する葉においては
クロロフィルが壊されて葉が黄色くなると同時に
葉に蓄積した糖分が紫外線の影響などで
れそれまで存在しなかった
新たな色素となる赤色の色素「アントシアン」が作られ
葉は赤くなります。
イロハモミジ
ハウチワカエデ
メグスリノキ
サトウカエデ
ヌルデ
ヤマザクラ
ウワミズザクラ
ナナカマド
ミズキ
など
黄葉(こうよう、おうよう)
「カロチノイド」の黄色の色素
黄葉する葉においては
クロロフィルが壊されることによって
緑色が消えて、
元々葉の細胞にあった(隠れていた)
黄色の色素「カロチノイド」が目立つようになったものです。
新しい色素の合成がおこるわけではなく
赤色の色素「アントシアン」を作れない性質もあります。
イチョウ
シラカンバ
ポプラ
ハルニレ
イタヤカエデ
など
褐葉(かつよう)
「フロバフェン」の茶色の色素
褐葉する葉においては
クロロフィルが壊されて葉が黄色くなると同時に
褐色になる場合も赤色と同じ仕組みで
タンニン物質の茶色の色素「フロバフェン」が
合成されるために褐色に変わります。
ブナ
ミズナラ
カシワ
スギ
ケヤキ
トチノキ
スズカケノキ
など
クロロフィルや他の色素が壊れ続ける間、
これらの色素が
葉の落葉を守ってくれるのです。
最後に鮮やかな紅葉となり
葉と茎は離層を中心に切断される、
これが落葉の仕組みです。
紅葉の色づき
太陽の日をたくさん浴びて
寒暖の差が大きく、夜に冷え込むと色が変わります。
色づきの条件
一般に
紅葉や黄葉が色づき始めるのには、
秋から冬にかけて
昼夜の時間が短くなり、気温の低下とともに色づき始め
1日の最低気温が8℃以下の日が続く必要があり
5℃以下になると
クロロフィルの分解が進み、一気に色づきが進みます。
美しい色づきの条件
日中の気温は20~25℃、夜間は5~10℃と
昼と夜の気温差が大きく15℃位あり
更に、
寒い朝の日が20~25日間続くと
紅葉は美しいと言われます。
地中水分が減少することで紅葉を進めていますが
乾燥し過ぎると
紅葉前に枯れてしまいます。
空気が澄んで葉が充分日光を受けられることや、
大気中に適度な湿度があって
葉が乾燥しないことなどが必要です。
主に
夏季に適度の気温、降水、日照と
秋に入って昼夜の気温の差が大きい
など
色々理由はありますが
「日光・寒暖差(気温)・湿度(水分)」の
この3つの気候条件が必要です。
逆に、
夏季に日照不足であったり猛暑や少雨だと
紅葉が映えなくなります。
紅葉(こうよう)・紅葉(もみじ)・紅葉狩り
「紅葉(こうよう)」は
秋の季節、落葉の前に
葉の色が赤や黄色に変化する自然現象による
色鮮やかになったその景色全体のことで
基本的には
現象や景色をいう時に用いられる呼び方です。
紅葉(もみじ)
「紅葉(もみじ)」は
一般的に
紅葉(こうよう)している「楓(かえで)」のこと
または
「楓(かえで)」の別名が「紅葉(もみじ)」です。
「色づく現象のこと」という点では
紅葉(こうよう)と同じですが
「もみじ」も「楓」も「カエデ科カエデ属」の植物で
「ヤマモミジ」、「オオモミジ」など
日本では、楓の一種を
「モミジ」と呼んでいます。
「モミジ」と呼ぶことはあっても
厳密に言えば
「モミジ」という「種」の植物は存在しません。
由来はさておき
楓が秋に美しく紅葉(こうよう)し、
紅葉(こうよう)を代表する植物であるため
「紅葉(もみじ)」として親しまれています。
紅葉狩り
「紅葉狩り(もみじがり)」は
獲物を追う「狩猟」になぞらえて
「〇〇狩り」という意味で使われていましたが
現在では
「紅葉を狩る(採る)」のは誤りで
「紅葉を観る(見る)」が正解ですので
くれぐれも木の枝を折ったり、葉を採取したりと
自然破壊のないよう気を付けましょう。
紅葉前線
紅葉前線(こうようぜんせん)は
モミジ前線とも言いますが
全国各地の紅葉していく様子(紅葉出現日)を
時期と場所を線状に結んで、前線に例えたもので
緯度と標高差の組合わせからなる前線でもあります。
紅葉は気温が低くなると色づき始めますから
北から徐々に南下していきます。
紅葉の進み具合は
秋の気温が低いと早まり、気温が高いと遅くなり
その年の気象条件によって微妙に変化し
山間部や内陸部、地域による温度差によっても
紅葉の進み具合が違ってきます。
平均して
10月初旬に北海道の大雪山周辺から始まり、
12月初旬には鹿児島県に到着します。
日本で最も遅い紅葉が楽しめるのは
静岡県の熱海市といわれていて
熱海の温暖な気候から
毎年11月下旬から12月過ぎまで見頃のようです。
沖縄は
真冬でも最低気温が10℃より下がらない為、
紅葉を見ることはできません。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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