台風襲来の日は9月26日です。
1954年(昭和29年)
「洞爺丸台風」で青函連絡船・洞爺丸が転覆。
1958年(昭和33年)
「狩野川台風」が伊豆・関東地方に来襲。
1959年(昭和34年)
「伊勢湾台風」が東海地方に上陸。
など
統計上、9月26日に
台風襲来の回数が多い日であることが由来です。
今回は台風のお話です。
台風のメカニズム
台風(たいふう 英: Typhoon)は
気象界において
最も解明が進んでいない一つとされています。
日本の南
北西太平洋で発生する台風は全体の3割を占め
台風とは、渦を巻いた積乱雲の集合体です。
気圧
気圧は「大気の圧力」の事で
地球の重力によって引きつけられていて
地表を押す力(重さ)となっています。
つまり
空気の重さによる圧力が気圧です。
気圧が高い場所では、空気が多いから重く
気圧が低い場所では、空気が少ないから軽く
そこで
空気が多い気圧の高いところから
空気が少ない気圧の低いところに空気が流れることになり
これが「風」です。
高気圧や低気圧は
単純にまわりより気圧が高いか低いかで決まります。
気圧が高いほうから低いほうへ風が吹くので
高気圧は
周りより気圧が高いところで
高気圧からは「時計回りに風が吹き出す」
中心付近では下降気流を生じ
雲が発生しにくいので天気が良い。
低気圧は
周りより気圧が低いところで、
低気圧からは「反時計回りに風が吹き込む」
中心付近では上昇気流を生じ、
雲が発生しやすいので天気が悪い。
コリオリの力(転向力)
時計回り、反時計回りになるのは
地球の自転により
風の流れを曲げようとする力の「転向力」が働くからです。
緯度によってその力の大きさに違いが出てきますが
極付近でもっとも強くなり、
赤道付近がもっとも弱くなります。
北半球にある日本の
地球の自転方向は東回りです。
北極の上空から見ると
左回り(反時計回り)に自転しているため
運動している物体は進行方向に対して
右向きに働く力を受け常に右側にズレます。
これが
コリオリの力(転向力)です。
南半球では
常に左側にズレる力として働きます。
大気に働く力は「転向力」の他にも
「気圧傾度力(きあつけいどりょく)」
「摩擦力」
「遠心力」や風の力などまざまな要素があります。
地球が自転していないと空気は渦を巻かずに
風がまっすぐに吹き込んでそのまま上昇してしまいます。
発生メカニズム
熱帯地方の海上で発生した低気圧のことを熱帯低気圧と呼び
台風は
北西太平洋または南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、
低気圧域内の最大風速(10分間平均)が
17.2m/s(1秒間に17.2m 進む風の速さ)以上にまで
発達したものを「台風」といいます。
台風は、
一年中暑い熱帯地方の北緯5度から20度くらいの
海上でもっとも多く発生します。
海面水温が高いだけでは台風の発生・発達に繋がりませんが
一般的に
海面水温が26~27℃の海域で発生するといわれています。
同じ熱帯でも、大陸には熱帯低気圧はできません。
これは、
海から放出される莫大な水蒸気が
熱帯低気圧の源であるからです。
台風は日本の南
赤道付近の北西太平洋の熱帯の海上で生まれます。
太陽の熱(強い日差し)によって
暖められた海面に接する空気は気温が上昇します。
同時に
海水が蒸発し多量の水蒸気が発生し
湿った暖かい空気になります。
周りの空気より軽いため
水蒸気を含んだ暖められた空気が上へと上がっていき
上昇気流(じょうしょうきりゅう)を発生させます。
その上昇気流によって上空に運ばれ、
温度の低い上空で冷やされて再び水
(凝結“ぎょうけつ”= 気体から液体への変化)となり
雲を作ります。
雲が生成される時に
熱(潜熱)が放出され周囲の空気を暖め
上昇気流をますます強めます。
暖められた空気は膨張して軽くなるため
勢いよく上昇を続け
気圧を低下させて低気圧を形成します。
空気は気圧の低い方に流れるため
周りの海面上から低気圧の中心に向かって
湿った暖かい空気が渦を巻きながら吹き込みます。
流れ込んだ空気は
地球の自転の影響で生じる力により、
中心に向かって(北半球では)反時計回りに渦を巻きます。
湿った暖かい空気を周囲から呼び込んで
上昇流となって渦巻き状の雲を生成して
潜熱によってさらに大気が暖められます。
中心の気圧はさらに下がって回転が速くなり
渦の中心に向かって吹き込む風は益々強く
渦も大きくなり巨大な積乱雲となりと・・・
このプロセスを繰り返すことにより
強い風雨を伴う熱帯低気圧になります。
熱帯低気圧が更に発達して台風になります。
発生期
上記のように
台風になるまでの期間ですが
進行方向や速度は非常に不安定です。
発達期
台風となってから
中心気圧が下がり勢力が最も強くなるまでの期間です。
暖かい海面から供給される水蒸気をエネルギー源として発達し
中心気圧はどんどん下がり、中心付近の風速も急激に強くなります。
最盛期
中心気圧の下降が止まり、
台風の半径は増大し最大風速が最も強い期間で
しだいに速度が鈍ります。
台風が向きを変えることを「転向」といい
転向の時期に相当します。
台風の北上に伴い
中心付近の最大風速は徐々に弱まる傾向に入りますが、
暴風の範囲はむしろ広がる期間でもあります。
衰弱期
衰弱して消滅するまでの期間で
台風は海面水温が熱帯よりも低い日本付近に来ると
海水温が低いため海からの水蒸気の供給が減少し
熱帯低気圧や温帯低気圧に変わります。
衰えつつあるとはいえ
個々には様々な形態をとる台風の猛威には
注意する必要があります。
温帯低気圧と熱帯低気圧
日本に接近する台風は
主に最盛期と衰弱期のもので
最盛期は暴風と大雨により、衰弱期は大雨により
大きな災害をもたらすことが多くあります。
上陸した台風が急速に衰えるのは
水蒸気の供給が絶たれ
さらに
陸地の摩擦によりエネルギーが失われるからです。
北からの寒気の影響が加わり
台風本来の性質を失って
寒気と暖気の境である前線を伴う「温帯低気圧」に変わります。
しかし
低気圧の中心付近では最大風速のピークは過ぎていますが
強い風の範囲は広がるため
低気圧の中心から離れた場所で大きな災害が起こったり
台風域内は温度が高いため
寒気の影響を受けて再発達して
風が強くなり災害を起こすこともあります。
また
熱エネルギーの供給が少なくなり衰えて
「熱帯低気圧」に変わる場合もありますが
この場合は最大風速が17m/s未満になっただけであり
強い雨が降ることがありますので
「温帯低気圧」 「熱帯低気圧」に変わったと言っても
いずれの場合も消滅するまで油断はできません。
台風の目
台風の中心付近は
風向きが乱れているために
中心へ収束しようと
防風が互いに打ち消し合いながら
周囲から吹き込んだ風が強い上昇気流をつくって
風は、「渦の壁」に遮られて上昇していきます。
この渦の中央では
中心から外に引っ張られる遠心力と
気圧の差によって生じる力が釣り合って
風が中心部に入り込めない空洞の部分ができます。
この風の入り込めない部分が
「台風の目」または「熱帯低気圧の目」です。
風が中心部に入り込めない状態になるということは
つまり
台風の目の中心部では雲をつくることができないのです。
その結果、
台風の目の下では
多くは曇りや雨ですが、青空が見えることもあり
比較的静穏な天気であることが多いとされます。
台風の目に入り青空が広がることにより
台風が通過したと勘違いしそうですが
台風の目の周囲は熱帯低気圧で最も風雨が強い部分であり
台風の目が過ぎれば
再び激しい暴風雨が吹き返しの風として吹くことになります。
台風発生場所
日本を含む北西太平洋に向かう台風は
主に5つの場所で発生することがわかっています。
筆保弘徳さん・吉田龍二さんの研究資料より
1.偏東風波動パターン(EW)
夏になると
モンスーン(季節風)という西風が吹きますが
この西風の影響を受けずに
赤道付近の偏東風の波動から発生に至ります。
偏西風の蛇行
偏東風が波のようにうねうねと南北に動き
大気の流れに渦が生まれます。
日本上陸は少ない。
2.東西風合流域パターン(CR)
モンスーン(季節風)の西風が吹き
西風域の東端で
貿易風(偏東風)の東風が合流する領域。
日本上陸は多い。
3.シアーラインパターン(SL)
北側で貿易風(偏東風)の東風が吹き
南側でモンスーン(季節風)の西風が吹き
西風と東風がすれ違う領域。
日本上陸は多い。
4.モンスーンジャイアパターン(MG)
モンスーン:季節風
ジャイア:渦
北西太平洋上に発生する
反時計回りで回転する巨大な渦でできる台風。
日本上陸は少ない。
5.既存の台風の南東側で発生するパターン(PTC)
先行する台風の後ろにできる台風で
南北の勾配と移流の影響によって
南東側へエネルギーが散逸され
時計回り(高気圧性の流れ)の渦ができます。
結果、そのまた南東側に
新たな台風形成となる
反時計回り(低気圧性の流れ)の渦ができます。
日本上陸は少ない。
日本が台風の通り道になる理由
日本が台風の通り道になると言うより
台風の通り道に日本があるといった感じですが
台風は自らでは動けません。
大きな空気の流れ(気流)に乗るからこそ
台風は動くことができるのです。
台風の進路というのは、
季節によって吹く方向を変化させ
その場の気圧配置や、気象条件によっても左右され
風に乗って進んできます。
台風が通りやすい経路図
筆保弘徳さん・吉田龍二さんの研究資料より
太平洋高気圧の影響
台風は一年中発生していて
日本に来ないものも含めて
そもそもの台風の発生数が多く
日本には夏や秋にかけやってきます。
一般的な台風の動きは
地球の自転の影響で
北~北西へ向かう性質を持っています。
また
台風は太平洋高気圧(夏の高気圧)の
外側を沿うようにして北上してきます。
台風の進路は
太平洋高気圧の位置や強さによって大きく変化します。
一般的に7月と8月は
日本列島を覆うように
太平洋高気圧が張り出しているため
台風が近づけず、北上します。
上空の風が弱いため
不安定な経路を進みやすいです。
9月になると
張り出していた太平洋高気圧も勢力が弱まり、
台風は
北東に進み日本列島に接近、上陸しやすくなるのです。
10月以降は、
北からの高気圧が張り出してくるため、
日本より南を通るようになります。
ちなみに
最も早い時期の上陸は
1956年、3号の4月25日、
最も遅い時期の上陸は
1990年、28号の11月30日です。
風の影響
6月から10月のころだけ、
台風が日本に向かって来るような向きで
風が吹いています。
春の台風は
北半球の低緯度地方(熱帯地域)で発生しますが
地球規模の風の偏東風
(東から西に向かってほぼ定常的に吹く風)に流され
台風は西に進んで、フィリピン方面に向かいます。
夏になると、台風が発生する緯度が高くなるため
偏東風により北西方向に流されながら
次第に北上します。
日本が位置する
北半球の中緯度地方(温帯地域)に来ると、
偏西風(西から東へ吹く強い風)影響を受けて
北東に向けて進路を変更し
速い速度で日本の方向へ向かって来ます。
ⓒ Weathernews
高気圧がどのくらい張り出しているか、
高気圧によって
どのくらい台風が大回りさせられているか、
高気圧を回って北上した後は、
いつ偏西風の影響を受けるかが
進路予想の最大のポイントのようです。
台風の右側と左側
大雨も暴風も両側で発生するのですが
台風は一般的に
進行方向の右側のほうが風雨が強いと言われています。
渦卷く反時計回りに吹き込む風の方向と
台風自体が進む風の方向が同じであるために
吹き荒れる風の勢力が増してしまいます。
一方、進行方向の左側では
両者の風向きが逆になるため、互いに打ち消しあって
右側ほど勢力は強くはありません。
気圧差によっては
台風から離れた場所で風が強まることがあり
進行方向左側で風が強まることもあります。
台風が遅く動いている場合には
台風自体が進むことによる効果は小さいので、
左右でそれほど大きな違いが出るわけではありません。
あくまでも
右側半分と比較して風雨が弱いだけであり
左側でも風雨は強いため警戒は必要です。
最後に
近未来における
台風活動の予測技術は確立されていません。
現時点では、
非常に強い熱帯低気圧の数は増えると予測されていて
地球温暖化の影響が台風の大きさや強さに及んでいるとは
結論付けされていません。
防災対策として、
そもそも台風をなくしてしまえばよいという発想から
上陸前に台風のエネルギーを弱めてしまおうという
実験も行われました。
結果的には
実験の効果であるかは確認することはできませんでした。
このような行為による実験は
予測不可能性な問題が生じます。
自分の国が免れて
他の国で被害が拡大してしまった場合など
どうするのでしょう?
確かに大きな災害に直結していますが
自然をコントロールするというのは無理であり
自然の驚異には勝てないし逆らえないのが摂理で
被害を最小限に抑えることを目標としての対策が
減災対策です。
過去から繰り返してきた
経験という貴重な教訓を生かすことが
人間と自然との望ましい姿の在り方ではないでしょうか?
台風による恩恵としては、
大量の降雨によって水不足の解消につながっています。
台風の強い風は、
海の表層をかき混ぜますから
結果的に海水温が低下することで
サンゴや生態系を維持している側面もあり
生物にとって必要な酸素を海底付近へ供給しています。
一方で、台風の勢力が強すぎると
強風による波浪でサンゴ自体が
破損されてしまうことも事実であり
地球的バランスが取られているのかしれません。
自然災害のリスクが年々増大していますが
豪雨や台風による災害リスクを理解し
ハザードマップから地域のハザードを知っておくなど
防災・減災対策が
大きな課題となってくると考えられます。
コメント